おさかなシンポジウム 出張版
開催レポート
「Tokyo ふしぎ祭(サイ)エンス 2025」
文部科学省が、科学技術への理解と関心を深め、日本の科学技術振興を目的に制定した「科学技術週間」のイベントの一環として、東京都と東京都公立大学法人が主催する「Tokyo ふしぎ祭(サイ)エンス 2025」に、「おさかなシンポジウム 出張版」として参加しました。
「Tokyo ふしぎ祭(サイ)エンス 2025」は、主に小・中学生を対象として科学技術に親しむことを目的として、令和7年度科学技術週間東京都特別行事として令和7年4月19日(土曜日)及び20日(日曜日)に日本科学未来館で開催されています。
今回のおさかなシンポジウムは「出張版」として「日本の魚食文化を守る」技術の一つとして、新鮮な魚をより遠くに運ぶための凍結技術について体験型のプログラムを実施しました。当日は、子供から大人まで幅広い層が参加し、魚に関する様々な知識を学び、驚きの技術を体験する貴重な機会となりました。
■Tokyo ふしぎ祭(サイ)エンス
https://www.fushigi.metro.tokyo.lg.jp/
overview
名称 | おさかなシンポジウム 出張版 |
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日時 | 2025年4月19日(土)・20日(日) |
場所 | 日本科学未来館(東京都江東区) |
参加人数 | 2日間で小学生160名(+保護者の方) |
企画 | おさかなシンポジウム実行委員会 |
協力 | 株式会社MARS Company(マーズカンパニー) |
参加形態 | 「Tokyo ふしぎ祭(サイ)エンス 2025」内特別出展 |
実施レポート
report

メインプログラムは、株式会社マーズカンパニーの三澤氏による「凍結技術」の体験講座を実施。水に塩23.5%混ぜた飽和塩水を冷却し-21℃スラリーのDIPS(Dipping Ice Processing System)や過冷却水の不思議な性質や、凍る瞬間を子どもたちが実際に体験しました。
DIPS(Dipping Ice Processing System)体験
氷と液体が混ざったシャーベット状の特殊な塩水に浸けて凍らせる急速凍結の仕組みを紹介。会場では生きたブリを凍らせる動画も上映し、鮮度保持の工夫に子どもたちは興味津々でした。体験では、魚に見立てた蓄冷剤パックを使用し、本来10時間ほどかかる凍結がわずか1分ほどで完了する様子を披露しました。急速に凍る様子を目の当たりにした子どもたちからは、驚きと歓声が上がりました。

熱伝導と凍結の関係
サウナ・風呂・フライパンの温度比較を通して、気体・液体・個体の熱伝導率の違いを学び、熱の伝わりやすさと凍結の関係に対する理解が深まりました。

実験の他にも、家庭での冷凍方法についても触れられ、DIPSと同様の飽和塩水を使った急速凍結は家庭でも原理的には可能であるものの、家庭用冷凍庫よりも低温が必要などの点で注意が必要であることも付け加えられました。
Tokyo Snowman体験
過冷却庫「Tokyo Snowman」で過冷却された水が、衝撃や氷核で一瞬にして凍る様子を体験。凍結温度でも液体を液体のまま保てる技術を見て、その現象の面白さに歓声があがりました。

「Tokyo Snowman」とは、本来であれば-1℃~-5℃の最大氷結晶生成帯で凍結してしまう液体を、過冷却技術によって液体のまま保つ特別な過冷却庫です。実験では、ペットボトルの水を過冷却状態にして、まず子どもたちに「凍っていない水」を飲んでもらい、過冷却の不思議さを体験してもらいました。
続いて、ペットボトル内の過冷却水に衝撃を加えると、一瞬で凍る様子を目の前で披露し、大きな歓声が上がりました。
さらに、子どもたちが飲んだ過冷却水の残りに、過冷却が解除された水(氷核)を加えると、その場で瞬時に凍結する現象が起こり、改めて「凍った水」よりも「凍っていない過冷却水」の方が冷たいことを体感してもらいました。
最後に、DIPSに過冷却水を注ぐ実験では、注いだ瞬間に水が凍りながらタワー状に立ち上がる現象が起こり、会場全体が驚きと歓声に包まれました。

マーズカンパニーの取り組み
マーズカンパニーは、食品の長期保存を実現する会社であり、「食品ロスをなくす」ための技術開発に取り組んでいる企業であることが紹介されました。過去には、地域の特産である魚介類の鮮度を保持したまま遠隔地へ輸送するプロジェクトに貢献し、テレビ番組でも紹介された実績なども紹介されました。
株式会社MARS Company(マーズカンパニー)
https://www.mars-company.jp/
まとめと今後に向けて
今回の「おさかなシンポジウム出張版」では、子どもから大人まで幅広い世代が、本来であれば廃棄されてしまう食材も、最先端の凍結技術によって新鮮なまま食卓に届けることができることを知り、「日本の魚食文化を守る」ための技術を体験し、学ぶことができました。
9月には姉妹イベント「エンジョイ魚まつり」の開催が知らされ、イベントへの参加を楽しみにする声も多く聞く事ができました。